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モルタル「浮き」補修方法

モルタルの「浮き」は、タイルの「浮き」と同じ原因で起こります。
ですから、モルタルの「浮き」の場合も、
タイルの「浮き」の場合も、補修方法は同じです。

 

モルタルの「浮き」の原因

 

最近まで、モルタルの「浮き」は、
施工上の問題が原因になっていると考えられていました。

 

下地のコンクリートが乾燥している部分にモルタルを塗ると、
モルタルの水分がコンクリートに奪われ、
モルタル本来の強度が発揮されないことがあります。
この症状を「ドライアウト現象」といいます。

 

ドライアウト現象を防止するためには、コンクリートに水打ち(水湿し)をし、
その後、モルタルを塗る必要があります。

 

この作業が不十分なために、
モルタルの「浮き」が生じる原因の一つになると考えられていました。

 

また、コンパネを型枠としたコンクリートは、
表面が平坦な状態でモルタルの足がかりとなる凹凸が少ない事も、
モルタルの「浮き」を生じる原因の一つと考えられています。
ですから、コンクリートの表面の目荒しが必要であるといわれています。

 

近年、タイルの剥落事故が原因となり、「浮き」の研究が進みました。

 

そして、「浮き」が生じる原因は、接着疲労であると考えられるようになっています。

 

外気温が上昇し、日射を受けると、モルタルの表面温度が上昇します。
熱が躯体のコンクリートに伝わるのには時間がかかるため、
両者に温度差が生じ、異なる動き(ディファレンシャルムーブメント)を伴ってしまいます。

 

このディファレンシャルムーブメントによって、
両者の境界に「せん断力」という力が働きます。

 

外気温が低下するときにも、逆方向に同じような現象が生じます。

 

そして、このせん断力は、毎日生じるため、
何年か積み重なっていけば現象が繰り返され、接着力が次第に低下します。
これが「接着疲労」です。

 

このメカニズムは「金属疲労」とおなじようなもので、
接着疲労も進行すればやがて剥離し「浮き」を生じます。

 

「浮き」が進行すると場合によっては剥落することがあるため、
とても危険です。

 

剥落して人身事故になれば、管理組合は管理者責任を問われます。

 

ですから、モルタル塗り外壁の場合は特に、定期的に点検し、
「浮き」を補修しなければなりません。

 

「浮き」は、テストハンマーで軽く叩くと、
空洞になっている内部で、カラカラと言った音がするので、点検は簡単です。

 

モルタルの「浮き」の補修方法

 

1960年代に、ベニヤ型枠、つまりコンパネを型枠に使用する工法が
急速に普及しました。

 

今まで建設されたいわゆる公団アパートは、
外壁その他をモルタル塗りで仕上げていましたが、
このモルタル塗りで仕上げた外壁は、10年〜20年程度経つと
「浮き」の発生がめだつようになりました。

 

この対策が必要になった頃に、ベニヤ型枠が登場し、
ベニヤ型枠に転換することで、モルタル塗りが不要になり、
抜本的な「浮き」対策ができるようになりました。

 

ベニヤ型枠の普及以前に建設された公団アパートのモルタル「浮き」補修は、
撤去して塗り替える事も考えられます。
ですが、工事が大がかりになってしまうことから、
モルタル表面から穴を開けてエポキシ樹脂を注入し、接着させる方法が考案されました。

 

エポキシ樹脂は、2成分を混合すると、
翌日にイは強力な接着性を発揮し、しっかり固まります。

 

ただ、当時しようされたエポキシ樹脂は低粘度で、
ハチミツのような粘度であったため、
注入した樹脂が固まるまでの間に下の方に流れてしまい、
密着させたい部分に残らないということが生じました。

 

そのため、改良され、現在は、高粘度のエポキシ樹脂が使用されています。

 

しかし、この後年度のエポキシ樹脂も、使用してみると、
新たな問題が発生しました。

 

数年後、施工した外壁面を見てみたところ、
エポキシ樹脂が簡単に剥離してしまうのです。

 

エポキシ樹脂の剥離の原因は、くり返しのせん断力により、
接着界面から1mm程度の深さのコンクリートやモルタルが疲労し、
強度低下を引き起こしているというものでした。

 

この現象の対策として、新たに考えられたのは、
穴はモルタルを貫通してさらにコンクリートの中に20〜30mmの深さまであけ、
エポキシ樹脂を注入した直後にステンレスの全ネジボトルを差し込むという方法です。

 

この方法であれば疲労が生じにくくなり、
長期間の耐久性があることが確認されています。

 

この方法がモルタルの「浮き」の補修工法として、
当時の公団アパートが採用したことで定着し、
現在に至ります。

 

この方法を「エポキシ樹脂注入ピンニング工法」と呼びます。

 

ステンレス全ネジボトルは、アンカーピンと総称され、
その後、様々な形状のアンカーピンが販売されました。

 

エポキシ樹脂注入ピンニング工法の工程

 

(1) モルタルにドリルでコンクリート内に達する穴をあける。

 

(2) あけた穴から注入用ポンプでエポキシ樹脂を注入する。

 

(3) 3〜5mm径のステンレス製の全ネジボトルを差込む。

 

(4) 目地モルタルとコンクリートを縫いこむようにして固定する。

 

* 固定する箇所の標準は、1uあたり9〜16箇所程度。

 

* 全ネジボルトの長さの標準は、コンクリート内に20mm以上埋め込むので、
 40mm程度の長さのものを使用する。

 

このエポキシ樹脂注入ピンニング工法によって、固定するだけで、
「浮きしろ」と呼ばれる空隙の一部には充填されます。

 

ただ、大半の空隙は残ってしまうため、
テストハンマーで叩くと「浮き」の音がするのはやむを得ないといわれています。