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タイル浮きが起きる理由と補修方法

タイル張りの外壁で起きる不具合は、「浮き」と「ひび割れ」です。

 

タイルのひび割れ

 

タイルのひび割れは、
コンクリートに生じた乾燥収縮ひび割れなどに伴って生じます。

 

そして、その原因のほとんどは、コンクリートの性質にあります。

 

タイルの浮き

 

タイルに浮きが生じる原因は、
ひび割れが起きる原因のように単純なものではありません。

 

モルタルの「浮き」の原因と共通する分が多いですが、
違う部分もあります。

 

タイルの浮き(接着疲労)

 

モルタルの「浮き」が起こる部分は、
コンクリートとモルタルの接着界面、
下塗りと中塗り、中塗りと下塗りなど、
それぞれモルタル同士の接着界面ですが、
タイルの場合は、その他、
タイルと接着モルタルの接着界面の「浮き」が加わります。

 

以前は、タイルと接着モルタルの接着界面の「浮き」の原因も、
接着モルタルのドライアウト現象や、
モルタルを塗ってからタイルを貼り付けるまでの
オープンタイムが不適切であることなど、
タイル張り施工上の問題と考えられていました。
また、タイルと接着モルタルの接着界面の「浮き」が生じる原因も、
何らかの施工上のミスがあるといわれていました。

 

ですが、最近は研究が進み、
タイルと接着モルタルの接着界面の「浮き」が生じる原因も、
「接着疲労」と呼ぶべき現象であると考えられています。

 

接着疲労とは、タイルとモルタルの接着力が低下するというものです。

 

外気温が上昇したり、日射を受けるとタイルの表面温度は上昇します。
躯体のコンクリートに熱が伝わるのには時間がかかるので、
両者に温度差が生じ、ディファレンシャルムーブメント(異なる動き)が起こります。

 

両者の境界に働く力は、せん断と呼ばれる力で、
外気温が低下するときにも逆方向に、このせん断力が生じ、
さらに、せん断力は毎日生じるため、
何年か、繰り返されれば接着力が次第に低下してしまいます。
そして、接着疲労が起こるわけです。

 

接着疲労には、温度変化が関係します。
ですから、黒っぽい、濃い色のタイルは、
白い色のタイルに比較して温度変化が大きく、
「浮き」が早く生じますし、多く生じます。

 

タイルの浮き(モイスチャームーブメント)

 

モイスチャームーブーメントも、タイルの「浮き」の原因になります。

 

モイスチャームーブメントとは、乾燥のくり返しによるものです。
目地モルタルは、降雨によって吸水しますが、
そのときわずかに膨張します。
そして、乾燥すると元の寸法に戻ります。
この寸法変化による動きをモイスチャームーブメントといいます。

 

温度の変化によるサーマルムーブメントとモイスチャームーブメントが複合し、
接着疲労が起きる事もあります。

 

接着疲労のメカニズム

 

接着疲労のメカニズムは、「金属疲労」と同じようなもので、
進行するとやがて剥離し「浮き」を生じます。

 

「浮き」が進行すると、剥離を起こすこともあり、
とても危険です。
スイスなど、ヨーロッパには、
タイル張りを法律で禁止している国もあります。

 

モルタルと同じ様に、タイルが剥落して人身事故になると、
管理組合は管理者責任を問われます。
ですから、タイル張り外壁も、モルタルと同じように時々点検をし、
「浮き」を確認したら「補修」しなければなりません。

 

「浮き」の箇所は、内部が空洞になっていて、
ハンマーで軽く叩くとカラカラと音がしますから
簡単に点検することができます。

 

10年以内には点検が必要です。

 

「浮き」の補修方法(エポキシ樹脂注入ピンニング工法)

 

「浮き」の補修方法で一般的なのは、
「エポキシ樹脂注入ピンニング工法」です。

 

エポキシ樹脂注入ピンニング工法は、
タイルの目地にドリルでコンクリートに達する穴を開け、
注入用ポンプでエポキシ樹脂を注入します。

 

そして、3〜5mm系のステンレス製の全ネジボルトを差込み、
目地モルタルとコンクリートを縫いこむようにして固定します。

 

タイルの大きさによって固定する箇所は異なりますが、
1uあたり、16〜50箇所程度とするのが一般的です。

 

全ネジボルトの長さは、
全ネジボルトはコンクリートの中に20mm以上埋め込むのが普通なので、
通常は40mm程度の長さのものを用います。

 

この工法によって、全ネジボルトで縫いこむように固定するだけで、
空隙の一部には充填されますが、大半の空隙は残ります。
ですから、テストハンマーで叩いた時「浮き」の音、
カラカラという音がするのはやむを得ないとされています。

 

「浮き」の補修方法(注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂タイル固定工法)

 

大型のタイル張りの場合や、同じタイルを特注で焼く場合など、
コストアップする場合は、目地ではなく、タイルの中心部に穴を開け、
中空ピンと呼ばれるアンカーピンや、ステンレス製の全ネジボルトで固定する工法があります。

 

中空ピンを用いるタイルの補修方法は、
「注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂タイル固定工法」といいます。

 

一般に使われているドリルではタイルに穴をあけるのが難しいので、
注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂タイル固定工法では、
ダイヤモンドを埋め込んだピットに、水を注入しながら使用する
特殊なドリルを使用します。

 

この方法は「タイル脳天打ち」と呼ばれ、
目地のピンニングの場合と比較するとコストアップします。

 

一般的な工法である「エポキシ樹脂注入ピンニング工法」は、
目地を固定することはできますが、
タイルを固定するものではないので、
タイル自体の剥落を完全に防ぐことが出来ないという不安が残ります。

 

ですが、注入口付アンカーピンニングエポキシ樹脂タイル固定工法は、
タイルをしっかり固定するので、100%安心できる工法であるといえます。

 

穴の仕上げ

 

穿孔した穴の仕上げは、中空アンカー用のキャップを使用する工法があります。

 

国指定重要文化財の「横浜市開港記念会館」は、
この工法で補修されています。

 

補修部分は近くで見ると、キャップの部分が見えますが、
少し離れてみれば、殆ど見えません。

 

マンションのタイルの張り替え

 

「浮き」の進行が著しい場合は、タイルを撤去して張りかえることが必要です。
ですが、マンションの張替えの場合は、新しいタイルの色が、
既存のタイルと違ってしまうことが多くあり、
この場合、マンションのグレードダウンにつながる事もあるので注意が必要です。

 

タイル剥落防止工法として、1990年代に、
タイル張り面の全面にビニロン製ネットを張り、
アンカーピンで固定する工法が開発されました。

 

この方法では、ビニロン製ネットの上に
ポリマーセメントモルタルを塗布した上に塗装仕上げとして、
タイルは隠ぺいしてしまうものです。
隠ぺいにより、外観がグレードダウンするのは避けられません。

 

また、同じ1990年頃、タイル張りの面の全面を、
不飽和ポリエステル樹脂を使用したFRPで覆う工法も開発されています。
この方法であれば、塗膜が透明に近いので、グレードの低下は生じません。

 

ですが、塗膜の伸び率が低いので、
タイルのひび割れ部分が10mm程度の幅で剥離し、
白く目立ってしまう問題や、黄変の問題点などが指摘されています。

 

2000年代になって、1990年頃に開発された方法の問題点をクリアする工法が開発されました。
それは、短繊維を混入し、硬化後透明になるアクリル樹脂で塗膜を形成する工法です。

 

塗膜をアンカーピンで固定するのは、今までの方法と同じで、
塗膜は殆ど透明で、タイルを隠ぺいせず、グレードダウンもありませんし、
一定の伸び率を持つことや、黄変しにくいことから、
FRP工法の問題点もクリアします。
ただ、工程が多いことや、価格が高いことなどにより、
まだ普及に拍車がかかっていません。

 

1990年台には、アクリル樹脂系クリア塗料といって、
タイル張りの面の全面に塗布する塗料も発売されました。
この塗料は、タイルの剥落を防止する目的ではなく、
目地モルタルの吸水防止を目的として塗布されるものです。

 

ですが、このクリア塗料は、タイル面に対する接着力が不足しています。
つまり、耐久性に問題があることが分ってきたので、
使用される例が少なくなりました。

 

最近は、2成分形アクリルウレタン系と、
2成分形アクリルシリコーン系塗料の組み合わせにより、
クリア塗料の耐久性の問題を解決する工法が開発されています。

 

目地モルタルから、雨水が浸入すると、
鉄筋が腐食する原因となり、建物のもちが悪くなります。

 

クリア塗料の塗布で、目地モルタルの吸水防止を図ることは、
鉄筋コンクリートの耐久性向上の観点から見ても、とても重要です。

 

クリア塗料の塗布によって、目地モルタルからの雨水の侵入が防止できると、
「モイスチャームーブント」も減少しますし、
タイルの「浮き」の原因の一つが低減するなどのメリットが多くなります。

 

目地部分から水が入り込むと、
一定の範囲で、コンクリート内を水分は移動します。

 

ですから、モルタルの吸水を防ぐことは、
鉄骨の腐食損傷を防止するために重要であり、必須なことなのです。